はじめに
こんにちは、KUDs です。
「AWS とは何か」を調べている方が本当に知りたいのは、用語の定義ではないと思っています。
知りたいのはたぶん、こういうことではないでしょうか。
- 自分にとって必要なものなのか
- 個人でも使えるのか、企業向けの高いやつなのか
- レンタルサーバーとは何が違うのか
- 覚えると仕事や副業につながるのか
この記事では、そこに正面から答えます。
個人が AWS で何ができるのか、そしてレンタルサーバーや VPS、Cloudflare とどう違うのかを、公式情報をもとに整理していきます。
営業する気はないので、「その用途なら AWS を使わないほうがいい」という話も正直に書きます。
実際、個人ブログを置きたいだけなら AWS は向いていません。理由も後ほど説明します。
なお、この記事に出てくる数字は2026年8月時点のものです。AWS は変化が速いので、判断に関わる部分には公式ドキュメントへのリンクを添えてあります。
この記事について
この記事は、AWS を初めて触る方向けのシリーズの1本です。
シリーズ全体では、AWS の全体像から、アカウントの初期設定、AWS CLI の導入、Claude Code を使った開発環境の構築、そして実際にアプリを公開するところまでを順番に扱っています。
全体の地図と読む順番は、以下のロードマップ記事にまとめてあります。

この記事はそのいちばん最初、「そもそも AWS とは何なのか」を扱う回です。
手を動かすのはまだ先なので、AWS アカウントを持っていなくても読めます。
AWSとは、ひとことで言うと
AWS(Amazon Web Services)は、Amazon が貸し出しているコンピュータとサービスの集合体です。
サーバー、ファイルの置き場、データベース、AI、そういったものを必要なときに必要なだけ借りて、使った分だけ払う仕組みになっています。
規模を数字で見ると、こうです(2026年8月時点)。
| What | How |
|---|---|
| サービスの数 | 200以上 |
| 世界のリージョン数 | 39 |
| アベイラビリティゾーン数 | 123 |
| 日本のリージョン | 東京(4つのゾーン)、大阪(3つのゾーン) |
リージョンやゾーンが何なのかは後ほど説明しますが、ここでは「日本国内にもデータセンターがあり、そこを借りられる」と理解しておけば十分です。
数字は AWS の公式ページで確認できます。
なお、日本語の記事では「34リージョン・108ゾーン」と書かれているものをよく見かけますが、これは2024年ごろの数字です。AWS は毎年増え続けているので、この手の数字を見たら発行年を確認したほうがいいです。
「サーバーを借りる」というより「部品を借りる」
AWS を分かりにくくしているのは、サービスが200以上あることだと思います。
ただ、考え方はシンプルです。
AWS は「完成品のサービス」ではなく「部品の集まり」を売っています。
- 計算する部品(サーバー)
- 置いておく部品(ファイル、データベース)
- つなぐ部品(ネットワーク、CDN)
- 守る部品(権限管理、暗号化)
これらを自分で組み合わせて、作りたいものを作る。
レンタルサーバーが「家具が配置された寮」なら、AWS は「家具は自分で揃える必要がある賃貸」というイメージが近いです。
自由度は圧倒的に高い代わりに、自分でセットアップする必要がある。これが AWS の本質で、後述する「向き・不向き」もすべてここから来ています。
実は、あなたが知っているあのサービスも AWS で動いています
「部品の集まり」と言われても、まだピンと来ないと思います。
身近な例を見たほうが早いので、AWS が公式に公開している導入事例からいくつか紹介します。
ひとつ先にお断りしておくと、導入事例は「その事例が公開された時点」の情報です。
AWS の事例ページには公開日が表示されないのですが、内容は数年前のものであることも珍しくありません。いま現在も同じ構成で動いているとは限らない点はご承知おきください。以下では、各事例が扱っている対象と時期を明記します。
ゲーム
| 事例 | AWS で何をしているか |
|---|---|
| VALORANT・リーグ・オブ・レジェンド(Riot Games) | 月間1.8億人が遊ぶゲーム基盤。対戦の遅延を35ミリ秒以下に抑えるため、プレイヤーに近い拠点で処理する仕組みを構築。インフラ費用を年1,000万ドル削減 |
| PlayStation Network(ソニー・インタラクティブエンタテインメント) | 月間1.23億人が使うネットワーク。200超の部品に分けて構築し、日常的に毎秒数十万リクエストを処理 |
| ニンテンドーeショップ(ニンテンドーシステムズ) | Switch 1.3億台・40か国以上へ24時間提供。大型タイトルの発売日には処理を120倍規模まで自動拡張 |
| フォートナイト(Epic Games) | 数百万人の同時接続。イベント時はピークで最大30倍まで自動的に拡張 |
| クラッシュ・オブ・クラン(Supercell) | 月間2.5億人が遊ぶゲーム群の基盤 |
| FINAL FANTASY VII EVER CRISIS(アプリボット) | リリース1週間で約500万ダウンロード。S3・EC2・Lambda・DynamoDB・CloudFront など、この記事で紹介した部品をそのまま使用 |
| あんさんぶるスターズ!!(Happy Elements) | リリース日100万ダウンロード超、ピーク時毎秒1万リクエスト超を処理 |
| DMM GAMES(EXNOA) | 250タイトル超のプラットフォーム。生成AIでコードレビューを2〜3日から約1時間に短縮 |
メディア・エンターテインメント
| 事例 | AWS で何をしているか |
|---|---|
| ABEMA | 約20チャンネルを24時間365日配信。世界的スポーツイベントでは60試合以上を配信し、障害はわずか1件 |
| バーチャル高校野球(朝日放送グループ) | 2015年は48試合だった配信が、2023年には全3,434試合に。1日最大156球場を同時配信 |
| フジテレビ | バレーボール国際大会で、2〜3秒の超低遅延による別アングル配信を約3週間で構築 |
| テレビ東京 | 22万本・13ペタバイトの映像アーカイブをテープから S3 へ移行 |
| Netflix | 会員2.8億人超、190か国以上。会員管理やレコメンドの基盤(※動画の配信自体は自社の仕組み) |
| Canva | 月間2.6億人が利用。S3 に230ペタバイト超を保存 |
| 月間6億人が利用。毎秒1,000万超のAIレコメンドを処理 |
研究・宇宙
| 事例 | AWS で何をしているか |
|---|---|
| NASA / ジェット推進研究所 | 地球観測衛星のデータを1日70テラバイト処理。余剰の計算資源を使う仕組みで最大90%割引 |
| JAXA | ロケットの軌道解析を AWS で検証し、20倍の高速化を実証。45万ケースの計算が約10日→10時間(※技術実証) |
| 理化学研究所「富岳」 | スーパーコンピュータ富岳のソフトウェア環境を AWS 上に再現し、順番待ちなしで研究できる環境を提供(※物理的な富岳が AWS で動くわけではありません) |
| Blue Origin | 月面用ハードウェアの設計にAIを活用。分析作業を4日から4時間へ |
| QPS研究所 | 九州大学発の小型衛星。従来の2,000kg・40億円級に対し、100kgで約100分の1のコストを実現 |
| Illumina(ゲノム解析) | ゲノム解読のコストが2001年の1億ドルから600ドルへ。新型コロナの検体37万件超を解析 |
| ウェザーニューズ | 船舶気象データ基盤を再構築。追跡隻数を3.2万隻から37万隻へ、運用コストは80%削減 |
| 英国気象庁 | 150年続く船舶向け気象通報の文章を、生成AIで自動作成 |
| KEK(高エネルギー加速器研究機構)ほか | シミュレーションの計算時間を10分の1に短縮 |
生活・インフラ
| 事例 | AWS で何をしているか |
|---|---|
| JR西日本「列車走行位置」 | 月平均400万・ピーク700万ページビュー。S3・CloudFront・Route 53・EC2 のみで構成 |
| 出前館 | 約20年使った自社サーバーから全面移行。CPU使用率が80%→約40%に |
| 日経電子版 | 画像処理をサーバーから Lambda に変え、コストが約10分の1に |
| ファミペイ(ファミリーマート) | 決済アプリの基盤。初日で約170万ダウンロード |
| PayPayカード | 基幹システムを移行。約10TB・150億レコードを72時間で移行 |
| Booking.com | 150ペタバイト、1日1億超のリクエスト、稼働率99.99% |
| 琉球銀行 | たった一人・約2週間でコールセンターを構築。店舗への電話が1日60件→ゼロ |
AWSで個人が実際にできること
では、個人の規模だと何ができるのか。
副業や学習でよく使われるパターンを挙げます。カッコ内は使うサービス名です。
Webサイト・Webアプリを公開する
作った HTML やアプリを置いて、インターネットに公開できます。
- ファイルを置く(S3)… AWS の説明は「どこからでも、どんな量のデータでも取り出せるオブジェクトストレージ」
- 世界中に速く配信する(CloudFront)… 世界750か所以上の拠点から配信されます
- 独自ドメインを設定する(Route 53)
静的なサイトなら、サーバーを1台も立てずに公開できます。
APIやバックエンドを作る
スマホアプリや Web アプリの裏側を作れます。
- コードを実行する(Lambda)… サーバーを用意せず、必要なときだけコードが動きます
- データを保存する(DynamoDB / RDS)
- リクエストを受ける(API Gateway)
使われていない間は料金がほぼ発生しない構成が作れるのが、個人にとって大きな利点です。
アクセスが月に数十件のサービスでも、維持費をほぼゼロにできます。
生成AIを使ったアプリを作る
Amazon Bedrock を使うと、さまざまな AI モデルを API 経由で呼び出せます。
文章の要約、画像の解析、チャットボットなど、いま需要が伸びている領域です。
定期実行の自動化
「毎朝9時に情報を集めて Slack に流す」といった処理を、サーバーを立てずに動かせます(EventBridge + Lambda)。
地味ですが、副業の入口としては現実的な領域です。
「毎日やっている手作業を自動化してほしい」という依頼は、一定の需要があります。
ファイルの保管・配信
写真、動画、バックアップなどを置いておけます(S3)。
容量の上限を気にしなくてよく、置いた分だけ課金される形です。
レンタルサーバー・VPS・Cloudflareとどう違うのか
ここがこの記事でいちばん書きたかったところです。
「AWS を使うべきか」は、他の選択肢と比べないと判断できません。
個人が現実的に選ぶのは、だいたい次の4つです。
| レンタルサーバー | VPS | Cloudflare | AWS | |
|---|---|---|---|---|
| 何を借りるか | 完成した環境の一部屋 | サーバー1台まるごと | コードを動かす場所 | 部品の集まり |
| 料金の形 | 月額固定 | 月額固定 | 無料枠+従量 | 従量課金 |
| 目安 | 月300〜1,500円 | 月500〜1,000円〜 | 無料〜月5ドル | 使った分 |
| 管理者権限 | なし(制限あり) | あり | ― | あり |
| OS の管理 | 不要 | 自分でやる | 不要 | 構成による |
| 自由度 | 低い | 高い | 中くらい | 非常に高い |
| 使いすぎたとき | 固定額で止まる | 固定額で止まる | 無料枠で止まる | 青天井 |
| 学習価値 | 低い | 中くらい | 中くらい | 高い |
※価格は2026年8月時点の目安です。各社ともキャンペーンが頻繁にあるため、必ず公式の料金ページをご確認ください。
レンタルサーバー(エックスサーバー、ロリポップ、さくら等)
WordPress でサイトを作りたいなら、これが最適解です。
月額はおおむね300〜1,500円程度です。
たとえばエックスサーバーのスタンダードプランは、契約期間によって月換算990円(12ヶ月)〜1,320円(3ヶ月)。WordPress の簡単インストール、独自ドメイン、無料 SSL、そして日本語のサポートまで込みで、この価格です。
※各社とも長期契約の割引やキャンペーンが頻繁にあり、価格は変動します。申し込む前に必ず公式の料金ページをご確認ください。
できないことは、環境を自由にいじれないという一点に集約されます。
管理者権限(root)が与えられないため、使える言語やデータベースは提供されているものに限られます。
注意点をひとつ。 最安プランは WordPress が動かない場合があります。
たとえばロリポップのエコノミープラン(月121円〜)はデータベースが使えないため、公式にも「メールでのご利用、シンプルな HTML サイトに」と案内されています。WordPress を動かすならライトプラン(月330円〜)以上が必要です。

VPS(さくらのVPS、ConoHa VPS、AWS Lightsail)
サーバー1台を月額固定で丸ごと借りるサービスです。管理者権限があるので、好きな OS に好きなソフトを入れられます。
さくらのVPS は512MBプランで月643円(石狩)。同じプランでも大阪671円、東京698円と、リージョンによって価格が違うので注意してください(2026年8月時点、税込)。
AWS にも Lightsail という VPS 的なサービスがあります。 月5ドルから、IPv6 のみの構成なら3.50ドルから使えます。
AWS 自身がサービスの選び方を解説したガイドのなかで、Lightsail を「最小限の設定で使える、シンプルで予算にやさしい選択肢」とし、用途の例として「個人ブログ、小規模サイト、MVP、プロトタイプ」を挙げています(Lightsail・Elastic Beanstalk・EC2 の選び方)。
VPS の代償は、OS の管理を全部自分でやることです。
セキュリティ更新、バックアップ、障害対応。動かなくなったら自分で直します。この手間を「勉強になる」と取れるかどうかが分かれ目です。
Lightsail を検討中の方への注意: Lightsail には、WordPress などをワンクリックで導入できるテンプレート(ブループリント)が用意されていますが、このうち Bitnami 社が提供していたものは、WordPress・LAMP・Nginx・Node.js が2026年11月19日に提供終了となります。
とはいえ、WordPress が使えなくなるわけではありません。
AWS 自身が用意した Lightsail 版のブループリントが同じ用途で提供されているため、これから新規に作る場合はそちらを選ぶことになります。
すでに動いているインスタンスは、終了日以降もそのまま動き続けます。
Cloudflare(Workers / Pages / R2)
個人にとって、無料枠がいちばん強いのがここです。正直に書いておきます。
- Pages … 静的サイトの公開。静的ファイルへのリクエストは無料プランでも無制限
- Workers … コードの実行。無料で1日10万リクエスト
- R2 … ファイル置き場。無料で10GB、そして外部への転送料金がかからない
有料プランも月5ドルからです。

静的なブログやポートフォリオを公開したいだけなら、Cloudflare Pages が最も手軽で、実質無料で使い続けられます。
制約は、Workers が通常のサーバーではないことです。
リクエストを受けたときだけ動く仕組みなので、長時間動き続ける処理や、常駐プロセスが必要なものには向きません(無料プランでは1回あたりの CPU 時間が10ミリ秒に制限されます)。
正直な話:個人ブログを置くだけならAWSは向いていません
ここまで読んで、「AWS じゃなくてもよくない?」と思った方は、正しいです。
目的別に、はっきり線を引きます。
| やりたいこと | おすすめ |
|---|---|
| WordPress でブログを書きたい | レンタルサーバー |
| 静的サイト・ポートフォリオを公開したい | Cloudflare Pages |
| サーバーを触って勉強したい | VPS |
| AWS そのものを学びたい / 仕事や資格につなげたい | AWS |
| 将来大きくなるかもしれないものを作りたい | AWS |
AWS が正解になるのは、「目的が AWS を学ぶことそのもの」であるときです。
サイトを公開することだけが目的なら、AWS は遠回りになります。
実例で見てみます
たとえば「小さな静的サイトを S3 で公開する」構成の月額を、公式の単価から計算するとこうなります(東京リージョン、月1万PV程度を想定)。
| 項目 | 月額(概算) |
|---|---|
| ファイルの保管(S3) | 約0.01ドル未満 |
| リクエスト(S3) | 約0.06ドル |
| 通信(月100GBまで無料枠あり) | 0ドル |
| 小計 | 約0.06ドル |
| 独自ドメインの DNS(Route 53) | 0.50ドル |
| 合計 | 約0.56ドル |
ホスティング本体より、DNS の固定費のほうが8倍高いという結果になります。
月80円程度なので安いといえば安いのですが、これを実現するために S3・CloudFront・Route 53・証明書・権限設定と、5種類の設定が必要です。
さらに落とし穴があります。
S3 の静的サイト機能は HTTPS に対応していません。 公式ドキュメントにも「S3 のウェブサイトエンドポイントは HTTPS をサポートしていません」と明記されています。
独自ドメインで HTTPS にするには CloudFront を組み合わせる必要があります。
Cloudflare Pages なら、これが無料で、数分で、HTTPS 込みで終わります。
いちばん大事な違い:AWSには使いすぎの上限がありません
金額よりも、この差のほうが個人には重要だと思っています。
- レンタルサーバー・VPS … 月額固定。使いすぎても金額は増えません
- Cloudflare … 無料枠を超えたら止まる(もしくは有料プランへ)
- AWS … 従量課金。上限がありません
AWS には予算アラートの機能がありますが、これは通知するだけで、支払いを止めるものではありません。AWS 自身も、使用から通知までにタイムラグがあることを認めています。
つまり、レンタルサーバーと Cloudflare は「失敗したら止まる」、AWS は「失敗したら請求が伸びる」という構造の違いがあります。
個人にとっては、この非対称性は価格差より重い意味を持ちます。
だからこそ、AWS を始めるときは最初に予算アラートを設定するのが定石になっています。
その手順は、シリーズの次の記事で詳しく扱います。
それでもなお AWS を勧める理由は、シンプルです。
仕事で使われているのが AWS だからです。学習の目的がキャリアや副業なら、遠回りに見えてもここを通る価値があります。
AWSの料金はどういう仕組みか
AWS 公式は、料金の考え方を4つに整理しています。
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| 使った分だけ払う | 基本はこれ。使わなければ0円に近づく |
| 定額プラン | 一部サービスで、複数をまとめた月額固定の選択肢 |
| コミットすると安くなる | 1年・3年の利用を約束すると割引 |
| 使うほど安くなる | 量が増えると単価が下がる |
ここでひとつ、古い情報の注意です。
日本語の記事では3つ目を「予約すると安くなる」と説明しているものが多いのですが、現在の公式の表現は「コミットすると安くなる」(Savings Plans が中心)に変わっています。また、2つ目の「定額プラン」は比較的新しい考え方で、触れている日本語記事はほとんどありません。
無料で使える枠について
「AWS には無料枠がある」という話を聞いたことがあるかもしれません。
ここは2025年に大きく変わったので、古い情報に要注意です。
要点だけ書くと、
- 「アカウント作成から12ヶ月無料」は、新規アカウントでは終了しました
- 代わりに、最大200ドルのクレジットをもらえる仕組みになりました
- ずっと無料(Always Free)の枠は今もあります
この変更は AWS を始めるときの前提を変えるほど大きいので、次の記事で詳しく扱います。
最初に知っておくと混乱しない3つの概念
AWS を触り始めた人がつまずくポイントは、だいたい決まっています。
先に3つだけ知っておくと、無駄な時間を使わずに済みます。
1. リージョンとアベイラビリティゾーン
リージョンは「どこの国のデータセンターを使うか」という単位です。日本から使うなら東京(ap-northeast-1)が基本になります。
各リージョンは、最低3つの、物理的に離れた「アベイラビリティゾーン」で構成されています。ひとつのゾーンが災害で止まっても、別のゾーンで動かし続けられる、という設計です。
そして、初心者が100%ハマるのがここです。
リソースを表示すると、指定したリージョンに紐づくリソースだけが表示されます。これは、リージョンが互いに独立しており、リージョン間でリソースが自動的に複製されないためです。
つまり、画面右上のリージョンが変わっているだけで、「作ったはずのサーバーが消えた」と見えることがあります。
「作ったものが見つからない」と思ったら、まずリージョンを確認してください。
2. 責任共有モデル
AWS は「クラウドのセキュリティ」を守り、利用者は「クラウドの中のセキュリティ」を守る、という分担になっています。
| 誰が | 何を守るか |
|---|---|
| AWS | データセンター、物理的な機器、ネットワークの基盤 |
| 利用者 | データ、権限設定、OS の更新、アプリの安全性 |
「AWS を使えば安全」ではありません。 設定を間違えれば、データは普通に公開されます。
実際、事故のほとんどは利用者側の設定ミスで起きています。
3. グローバルなサービスと、リージョンごとのサービス
ほとんどのサービスはリージョンごとに存在しますが、一部はリージョンに属さないものがあります。
- IAM(権限管理)
- Route 53(DNS)
- CloudFront(CDN)
これらは「どのリージョンで作ったか」を気にする必要がありません。
逆に言うと、設定するとアカウント全体に効くということでもあります。
AWSは資格の勉強にもつながる
副業やキャリアを考えている方向けに、資格の話も書いておきます。
AWS には認定資格があり、入門にあたるのが以下の2つです(2026年8月時点)。
| 資格 | 試験コード | 時間 / 問題数 | 受験料 |
|---|---|---|---|
| クラウドプラクティショナー(入門) | CLF-C02 | 90分 / 65問 | 100 USD |
| ソリューションアーキテクト – アソシエイト | SAA-C03 | 130分 / 65問 | 150 USD |
有効期限はいずれも3年です。
資格情報も古くなっているので注意
資格の構成は最近わりと動いています。古い記事を参考にすると存在しない資格を目指すことになるので、挙げておきます。
| よく見る記述 | 2026年8月時点の実際 |
|---|---|
| SysOps アドミニストレーター – アソシエイト | 「CloudOps エンジニア – アソシエイト」に改名(SOA-C03、2025年9月〜) |
| 専門知識(Specialty)は6種類 | 2種類に縮小(ネットワークとセキュリティのみ) |
| 機械学習 – 専門知識 | 2026年3月31日で終了 |
入門としては、まずクラウドプラクティショナーで用語に慣れ、手を動かしながらソリューションアーキテクトを狙う、という順序が定番です。
個人的におすすめしたいのは、参考書を読む前に一度手を動かしてしまうことです。
S3 にファイルを置いて、IAM でユーザーを作って、請求画面を見る。この体験があるだけで、用語の定着速度がまったく違います。
「クラウドエンジニアの平均年収」について
「AWS のスキルがあると年収が上がる」という話はよく見かけます。
気になる方が多いところなので、調べた結果を正直に書いておきます。
まず、日本の公的な職業分類に「クラウドエンジニア」という職種は存在しません。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査で IT に関係する区分は、「システムコンサルタント・設計者」「ソフトウェア作成者」「その他の情報処理・通信技術者」の3つだけです。
令和7年の調査では、たとえば「ソフトウェア作成者」の推定年収は約578万円(労働者数81万人)でした。
つまり、「クラウドエンジニアの平均年収は◯◯万円」という数字に、照合できる公的な裏付けは存在しません。
よく見かけるその手の数字は、転職・フリーランス媒体が自社の求人や登録者から算出したもので、抽出方法が公開されていないことがほとんどです。参考程度に見るのが安全だと思います。
また、AWS 自身は認定資格の年収調査を公開していません。AWS が給与に触れるときは、必ず第三者の調査を引用する形になっています。
私としては、年収の数字を根拠に学習先を決めるのはおすすめしません。
それより、ご自身が応募したい求人を実際に検索して、「AWS」と書かれた求人がどれくらいあり、どんな条件が並んでいるかを自分の目で見るほうが、はるかに確実な判断材料になります。
よくある質問
Q. AWS は個人でも契約できますか?
A. できます。法人である必要はなく、クレジットカードとメールアドレスがあれば個人で登録できます。
Q. 使わなければ料金は0円ですか?
A. 基本的には「使った分だけ」ですが、存在するだけで課金されるものがあります。代表的なのは、確保したままの IP アドレス、停止中のサーバーに紐づくディスク、データベースなどです。「動かしていない=無料」ではない点に注意してください。
Q. AWS と Azure、Google Cloud はどう違いますか?
A. できることは大きくは変わりません。日本の求人数と日本語の情報量が最も多いのが AWSなので、学習目的なら AWS から始めるのが無難だと考えています。
Q. プログラミングができなくても使えますか?
A. 使えます。マネジメントコンソール(Web の管理画面)だけでもサーバーを立てたりファイルを置いたりできます。ただし、できることを広げたいならコードは書けたほうが早いです。
Q. 英語ができないと厳しいですか?
A. 管理画面もドキュメントも日本語化されています。ただし日本語ドキュメントは機械翻訳が混じっていて読みにくいことがあるので、詰まったら英語版を見ると解決することがあります。
Q. 無料で試せますか?
A. 新規アカウントには最大200ドルのクレジットが付きます。ただし2025年に仕組みが変わっており、注意点があります。次の記事で詳しく説明します。
さいごに
AWS とは何か、個人や副業で何ができるのかを、他の選択肢と比べながら整理しました。
改めてまとめると、こうなります。
- AWS は「完成品」ではなく「部品の集まり」
- サイトを公開したいだけなら、レンタルサーバーや Cloudflare のほうが速くて安い
- AWS が正解になるのは、目的が「AWS を学ぶこと」であるとき
- 従量課金には上限がないので、始める前に安全装置をつける
そして、ここまで読んで「それでも AWS を触ってみたい」と思った方には、次に読んでいただきたい記事があります。
AWS を始めるときに最初にやるべき初期設定をまとめた記事です。
課金事故を防ぐ設定を先に済ませてしまえば、あとは安心して学習に集中できます。

シリーズの全体像は、ロードマップからも確認できます。

KUDs のサービス
KUDs では、実際に AWS 上で動く Web サービスを公開しています。
「個人でもこのくらいのものは作れる」という参考にしていただければ嬉しいです。


ご質問やご指摘は contact@kuds.jp までお寄せください。
「ここが分かりにくかった」という声は、記事を良くするうえでいちばんありがたいフィードバックです。
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