【完全比較: EC2 vs LightSail】WordPress に最適な AWS サービス

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はじめに

本記事では、WordPressに最適なサービス比較を行います。
対象は、EC2 と LightSail です。
※EC2: Amazon Elastic Compute Cloud

なお、前提として EC2 や LightSail の基礎知識のおさらいを含みます。
結論だけ知りたい!知りたいという方は、「4. EC2 と LightSail の直接的な比較」か、「5. どちらを選ぶべきか: 用途別ガイド」まで飛ばしちゃってください。

もし EC2 や LightSail の理解が曖昧な方は、是非頭からご一読ください。
改めて、それぞれのサービスの一般論が再認識できるかと存じます。
それでは、若干堅苦しく記事を書いていきます。

この記事の目的

WordPress サイトをホストする際の AWS サービス、EC2 と LightSail について、どちらが最適なサービスかを選択する参考になればと思い、この記事を執筆します。
各サービスの特徴、料金、パフォーマンス、利便性などを詳細に比較し、それぞれがどのようなシナリオに最適なのかを解説します。

WordPressについて

WordPress は、世界で最も広く使われている CMS の一つです。
※CMS: コンテンツマネジメントシステム

ブログから EC サイトまで、幅広いウェブサイトを作成できるプラットフォームです。
その高い柔軟性とカスタマイズ可能性、利便性が世界で高く評価されています。
世界中のウェブサイトの約 40 % が WordPress を使用しているとのこと。

WordPress を利用する際、ホストサーバが必要です。
一般的にはレンタルサーバーや、クラウドサービスの利用が選択肢として挙げられます。
今回は AWS サービスに絞って、EC2 / LightSail の比較を行います。

それでは、EC2 と LightSail のおさらいから行きましょう。
基本知識なくしてサービス選定は不可能です。

AWS EC2 について

EC2 の基本的な特徴

EC2 は、AWSが提供するコンピューティングリソースのサービスです。
EC2は、必要な時にすぐに新しいサーバーを提供し、使用する分だけ課金されます。

EC2 で WordPress を運用するメリット

EC2でWordPressを運用する最大のメリットは、柔軟性と拡張性です。

インスタンスのタイプやスペックを選択する自由度が高いです。
需要に応じて簡単にリソースをスケーリングできます。
例えば、「サイトのアクセス数が伸びた」際は、簡単にスペックを上げられます。
作業も AWS マネジメントコンソールからクリックするだけです。
この辺りは LightSail でも可能ですが、細かい所で自由度に違いがあります。

また、完全な管理者権限を持つため、サーバー環境を自由にカスタマイズできます。

EC2 で WordPress を運用するデメリット

一方、EC2 で WordPress を運用する際のデメリットもあります。
それは、初心者にとってはセットアップや管理が少々複雑であるという点です。。

サーバー管理には、ある程度の知識とスキルが要求されます。
セキュリティ設定やバックアップなども自己管理する必要があります。
一例として、「EC2 に WordPress をインストールしよう」や「WordPress 利用に伴い PHP をアップデートしよう」と思った時に、頭の中で手順やコマンドが出てこないだけでなく、手順の調べ方すらわからないよ…という方には少し難易度が高いかもしれません。

EC2 の無料利用枠と最小スペックについて

AWS では、EC2 の t2.micro インスタンスが無料利用枠に含まれます。
新規ユーザーは最初の12ヶ月間、月間750時間まで無料で利用できます。

最小スペックとしては、1 vCPU と 1 GB のメモリを備えています。
小規模なブログならこれで十分かと思います。
スモールスタートして、需要の増加に伴いスケーリング可能です。

EC2 の料金割引制度について

EC2は、以下の 3 つの料金モデルを提供しています。

  • オンデマンドインスタンス:
    • 使用した分だけ課金されるモデルです
    • 柔軟性が最も高いです
  • リザーブドインスタンス:
    • 1 年または 3 年の契約であらかじめインスタンスを予約します
    • 大幅な割引を受けることができます
  • スポットインスタンス:
    • AWS が未使用のコンピューティング容量を提供します
    • 通常の価格よりも大幅に低い価格で利用できます
    • ただし、AWS 側でリソースが必要となった場合には、インスタンスが中断される可能性があるため、注意が必要です

これらのモデルは、使用パターンに応じて選択できます。
WordPress は基本的に中長期的な利用になるかと思います。
継続する予定があれば、リザーブドインスタンスは検討候補に挙がります。

AWS LightSail について

LightSail の基本的な特徴

Amazon Lightsail は、AWSが提供する簡単に使用できるクラウドプラットフォームです。
Lightsail は仮想プライベートサーバー (VPS) ホスティングサービスとして機能し、固定的な低価格で提供されています。
ユーザーはコンソールから簡単にサーバーを立ち上げ、データベース、ストレージ、DNS等を管理できます。

LightSail で WordPress を運用するメリット

LightSail で WordPress を運用するメリットは、圧倒的楽さです。
コンソールから一瞬で WordPress を立ち上げることが可能です。
また、サーバーの管理が必要最低限になります。

初心者にも非常に取っ付きやすいインターフェイスが特徴的です。

LightSail で WordPress を運用するデメリット

一方で、LightSail のデメリットは、カスタマイズ性と拡張性の制限です。
LightSail は VPS として提供されます。
※VPS: Virtual Private Server
そのため、EC2 と比較してスケーリングや環境のカスタマイズに制限があります。

また、より高度なAWSサービスとの統合も限定的です。
例えば、ALB, RDS, S3 等と連携させようと思った時は、LightSail インスタンスは VPC が異なるため若干手間です。
そんなことをするぐらいなら最初から EC2 で作るべきでは?と思います。

LightSail の無料利用枠と最小スペックについて

AWS では、LightSail の最も安価なプランである $ 3.50 / 月 プランが初月無料で利用できます。
このプランでは、最小スペックとして 512 MB のメモリ、1 vCPU、20 GB の SSD ストレージ、1 TB のデータ転送が含まれています。

LightSail の料金設定について

LightSail の料金設定は固定的で、各プランの料金は一定です。
料金はプランに含まれるリソースにより異なります。
※リソース: CPU, メモリ, ストレージ, データ転送

安定した予算を計上したい方にとって、この固定的な料金設定は魅力的かもしれません。
また、EC2 のような複雑な料金割引制度もないため、料金体系が分かりやすいです。

EC2 と LightSail の直接的な比較

料金、無料利用枠、および割引制度

EC2 と LightSail の最も明確な違いの一つは、料金設定と無料利用枠です。

EC2 は複雑な価格設定を持ちます。
前述の通り、オンデマンド、リザーブド、スポットの購入方法があります。
これらは長期利用や予測可能な使用パターンにおいてコストを削減できます。
また、一部の EC2 インスタンスは 12 ヶ月間の無料利用枠の一部として利用可能です。

一方、LightSail は単純で固定的な価格設定を持ちます。
また、初月無料で、以降は選択したプランの料金が発生します。

パフォーマンスとスペック

LightSail と EC2 の最小スペックは似ています。
一方、EC2 の方がより高度なスペックのインスタンスを提供しています。
つまり、大規模なビジネスや高いパフォーマンスを要する場合、EC2 が優れています。

利便性

EC2 は高度なカスタマイズと拡張性を提供します。
しかし、これは一方でセットアップと管理がより複雑であることを意味します。

一方、LightSail は初心者にとって易しく、一連の作業をシンプルに抑えます。

柔軟性とカスタマイズ可能性

EC2 は高い柔軟性とカスタマイズ可能性を提供します。

一方、LightSail は柔軟性・カスタマイズの観点では限定的です。

サポート

サポートの観点では、あまり大きな差異はないかと思います。

いずれのサービスも、AWS 基盤側に関するサポートは手厚いです。

しかし、カスタムで導入したアプリ等については、ユーザー責任の範囲です。

どちらを選ぶべきか: 用途別ガイド

個人ブログまたは小規模ビジネス(AWS 初心者)

初めて WordPress を利用する方や小規模ビジネスを運営している方は、単純な料金設定と手間のかからない管理を提供する LightSail を選択することをお勧めします。

また、LightSail は初月無料というメリットがあります。
コストの最小化を考えている初心者や小規模ビジネスには適しています。

長期的な運用を考えるとEC2の方がコスト効率が良くなる可能性もあります。
しかし、まずは LightSail で始めてみるのが良いでしょう。

中規模から大規模のビジネス (AWS 中級者)

中規模から大規模のビジネスには、EC2 の柔軟性とカスタマイズ性が魅力的でしょう。

EC2 は非常に多様なインスタンスタイプを提供します。
そのため、大量のトラフィックや特定のパフォーマンス要件を持つビジネスにも対応可能です。

また、料金割引制度を利用することで、運用コストを削減することも可能です。
長期的な運用や一定トラフィックの場合、リザーブドインスタンスが検討可能です。

また、AWS 中級者の方にもおすすめです。
EC2 や、その他サービスを連携するにあたり、AWS の体系的な知識が身につきます。
そのため、AWS に関する理解度を高めたい方におすすめです。

高度にカスタマイズしたい場合 (AWS 上級者)

高度なカスタマイズや特定のパフォーマンス要件がある場合は、EC2が最適です。
もちろん、OS、ミドルウェア、ストレージ等、多様なカスタマイズが可能です。
これによって、特定のニーズに合わせた細かな調整が可能となります。

さいごに

今回の記事では、WordPress を EC2 と LightSail で運用する比較をしました。
結局のところ、人・要件に依るという結論になります。
あなたの前提知識と利用期間、サービス要件によって選定しましょう。

余談

筆者の AWS アーキテクチャ図紹介

draw.io「AWS 2d architecture for KUDs Blog WordPress」
draw.io「AWS 2d architecture for KUDs Blog WordPress」

こちらは、別記事 【3D / 2D 比較】AWS アーキテクチャ図を draw.io で描いてみた で作成した雑な図です。
以下では、簡単に紹介します。

  • Route 53:
    • 早速嘘でした。よくよく考えたら利用してませんでした。本当にすみません。
    • DNS は Cloudflare で管理しています。
  • ACM:
    • 証明書管理です。
    • Cloudflare と連携させています。
  • ALB:
    • シングルインスタンス構成なので負荷分散としての機能は発揮しておらず、名前負けしています。
    • 証明書管理や、インターネットからの HTTPS 通信の受けとして利用しています。
    • もちろん、無料利用枠をふんだんに使っています。
  • ASG:
    • シングルインスタンス構成です。
    • AWS 基盤側の障害等もありうるため、一応自動で新規インスタンスが作成される構成にしています。
  • EBS:
    • EC2 のルートボリュームです。
    • もちろん、無料利用枠をふんだんに使っています。
  • AMI:
    • ASG の Launch Template に利用しています。
  • RDS:
    • もちろん、無料利用枠をふんだんに使っています。

以上です。
もちろん、LightSail が便利なのは重々承知しております。
しかし、私のように色々なサービスを触りたい人にとっては逆効果です。
そのため、私は上記のような構成をとっています。
完全に余談でしたが、アーキテクチャ検討参考になれば幸いです。

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